焙煎工房
焙煎工房

富士珈機製の10kg直火釜です。
昭和48年製です。
「バルバロッサ」あかひげ王さんと呼んでいます。
何故、こんな古い焙煎機を使っているかと申しますと、
昔ながらの焙煎機は、内釜が分厚い。
分厚い内釜の焙煎機で煎った珈琲は、
分厚い鉄板で焼いたお好み焼きの様に、
分厚い鉄板で焼いた国産牛の様に、
分厚いお釜で炊いたご飯の様に、
分厚い鉄板で転がしたたこ焼きの様に、
独特の旨味センサーを持つ日本人が満足し得る
数少ない珈琲ではないかと思っています。
ご存知の方も多いと思いますが、内釜に穴があいていて、豆に直接火があたるのが直火式です。
(穴のない焙煎機の多くは半熱風式、その上二重構造になっているのが熱風式と呼ばれるものです。
焙煎法の違いで味は180度変わってくるので、焙煎機だけで味の違いは一概には言えません。
同じ直火式でも、焙煎法によっては大切なものが欠けてしまった珈琲もできます。同じ一つの釜で
同じ一つの豆で、全く違う味が作れます。それは、いかに焙煎法(焙煎の過程)が大切なのかと言う
事です。理想の味を表現するには、焙煎機・焙煎法そのどちらも同じくらい大切です。

私の父が珈琲屋を始めた頃、
珈琲は「悪魔の飲み物」と呼ばれていました。
それから45年。
大量生産、大量消費で、
すっかりファーストドリンクとなり、
本来の味わいを失ってしまった珈琲の
味わいの「わい」を取り戻したいと奔走する日々の中で、
この昔ながらの直火の釜は、多くの事を私に教えてくれました。
欧米の熱風式コーヒー全盛の時代に
少し時代遅れな感もある直火珈琲ですが、
昔ながらの直火釜は日本独特の珈琲を作り出します。
日本人独特の味覚が作り出して来たものは、
確かに伝承され残されてきました。
人の営みの中で生まれ、
人の手で作り上げられて来た珈琲は
更に手を加え、火を与える事で
より輝きを増してくれます。
多くの経験や人の手の温もりを抱えて味わう至極のもの。
多くの人が気に入る珈琲よりも
たった一人の人の心に深く刻まれる珈琲。
何処かで飲んだ事のある珈琲ではない。
誰かの珈琲でもない。
そこにしかないもの。
沢山の人の手と温もりが加えられた珈琲。
私は、そういう珈琲を旨いと思い、
そういう珈琲を作りたいと願い、
この昔ながらの直火の釜で
今日も珈琲を煎っています。
そして、直火珈琲は
たった一人の人の為に
多くの人の人生と
多くの人の痛みと温もりを抱え
今日もスロードリンクであり続けてくれています。



