
−2003.−
大好きなお蕎麦屋さんの新そば会に呼んでいただき、おじゃまして参りました。
そこのご主人が天火乾燥ものの蕎麦と機械乾燥ものの蕎麦の味の違いをおっしゃていて、
コーヒーの生豆と一緒やなあ・・農産物は何でも一緒やなあ・・
蕎麦を育てる人、打つ人、たくさんの人の苦労を思いながら食べる新蕎麦は、
私にとって、相当味わい深いものとなりました。
珈琲の新豆会か・・ コーヒー尽くし・・ちょっと気持悪くなりそうだけど、
やってみたい気もするなあ。
コーヒーはもっとおおらかな飲み物であって良いと思います。
「こうでなくてはいけない」と言うたった一人の人の言う事を盲信してしまうと、こちこちに固まって
しまいます。同じプロの中でも、同じように命がけでコーヒーに携わっている人の中にも、
色々な考えがあり、色々な嗜好の人がいます。
例えば、非水洗モカのモカ臭を、「発酵臭(腐ったニオイ)」と言う人もいれば、
いやそれがモカの個性で、モカ独特の香りと言うものだという人もいる。
同じ匂いを嗅いでも、「くさい」と感じる人と、「いい香り」と感じる人とに
分かれるのは、何もコーヒーに限った事ではないはずです。
かちんこちんの頭で嗅げば「くさいニオイ」でも、もっと気楽な気持ちで嗅げば、
気が遠くなるほどの良い香り・・だったりするかもしれませんし、
人がすすめる抽出法は、ただ単にそこのコーヒーに合った抽出法
と言うだけの事かもしれません。
直火と熱風式、水洗式と非水洗、原種豆とハイブリット種、コロンビアの北部産と南部産、
ブラジルのブルボンとブルボン種以外、それぞれの味の違いを知っているだけで、
自分の好みの味を見つける近道になります。
ほんの少しコーヒーの事を知るだけで、もっとおおらかにコーヒーを楽しむ事が出来るのでは・・。
炭酸ガス充填で新鮮さを保った!と言うコーヒーを飲みました。
これは、恐らく、焙煎工場と炭酸ガス充填工場が離れた所にあって、
既に古くなったものを炭酸ガス充填していると・・。
炭酸ガス充填の効果は、本当のところどうなのかなあ・・。
うーん。
−2003.11−
珈琲生豆は日進月歩(?)で悪くなっています。
年々悪くなる一方の上に、夏を過ぎると、もう・・頭をかきむしりたくなるほど。
今日もまた、あんなに美味しかったはずの豆が反逆行為をやらかしてくれます。
低温コンテナ輸送の豆など新しい試みの豆も出てきていますが、
やっぱり日本での保存状態が悪ければ、あんまり意味がない。
生豆を冷凍保存してみてはどうだろうか。冷凍とまではいかないまでも真空パックにして
低温貯蔵して貰いたい。生豆の価格に上乗せしてもらっても良いから、是非そうして貰いたい。
で、思い出したのですが、珈琲屋さんによって、焙煎後の豆の保存に冷凍をすすめる人と
そうでない人がいるけれど、これは熱風式かそうでないかで分かれるのではないかと思います。
熱風式の珈琲は冷凍保存すると味が抜ける。逆に風味が落ちる。・・・・・話が脱線しました・・・。
以前、「雑味」と「こく」の違いのわかる人は少ないと書いた覚えがあるのですが、
最近は若い人を中心にわかる方が増えて来ていると感じています。
それだけ普通の豆の質が落ちてきていると言う事なのかもしれません。
この世界規模のグルメコーヒーブームは、そう言うところから来ているのでしょう。
本当に、このままで地球は大丈夫なのでしょうか。
「よそのお店の珈琲を飲んでみる勇気を持ちましょう。」と言っていている人がいて、
ちょっとびっくりしてしまいました。それは、勇気を持たないと出来ない事?
ごく普通の当たり前の日常茶飯事的な事と思っていた・・。
珈琲は、正解の無い世界だと言われているけれど、長い歴史の中でようやく
「良い珈琲」と言うのは見えてきているように思います。
「日本一美味しいコーヒー」はどこにも無いけれど、「日本一良いコーヒー」は確かにあります。
皆それを作ろうと思えば簡単に出来るだろうけれども、それだけを売ることも出来るのかもしれない
けれど、そこにはやっぱりお店なりの葛藤があり、そのお店の味も大切にしなければ
なりませんし、自己満足になる事無く古くからのお客様の嗜好も大切にしなければなりません。
全てのコーヒー屋が同じ味を提供したら、楽しいはずのコーヒーがつまらなくなってしまいます。
どんなに良いコーヒーの味よりも、そのお店にしか出せない味も魅力的。
どんなに良いコーヒーを提供しているお店でも、この味がわからんかあ・・とか、
なんで皆ブルマンやモカやコナが好きなんや・・とか、悩みは尽きないだろう。
これで良いと言うものは何もない。
良いコーヒーとは?とか、本物のスペシャルティコーヒーとは?とか、そんな無意味な論争
ではなくて、自分の言葉で、生きた言葉で、「珈琲」と言うものを語れる人になりたいと思う。
10月からショッピングカートを導入してみたら、不具合が一杯出てきて、
毎日修正しなくてはならず、そのついでに日記を書いているので、
何だか進み具合が、今までになく「快調」でございます。
皆様には大変ご迷惑をおかけ致しましたが、もう大丈夫かと・・。
ホームページをちょこちょこいじり出して苦節10ヶ月。
「ええもん安いけど寄ってく?」位の気楽な気持ちで作っておりますが、
苦労の割には、あんまり前と変わってない気が・・。
これはどうも苦手分野だ・・・・・と気づくのが遅かった。
こんなつたないホームページにも訪れてくださる方が毎日いらっしゃって、
申し訳ないやら、有難いやら。心より感謝申し上げます。
新しいブレンドも出来ました。こちらは苦節1年。
何でこんな個性的な豆ばかりを集めてしまったのだと後悔しつつ。
名前は宝塚歌劇さんからお借りして(ちゃんとおことわり致しまして)
付けてみました。よく見れば何だか、こっぱずかしかったりも致します。
地元の方は皆さん揃って、大爆笑!
地元の方ほど歌劇は見たこと無いと言う方が多いと言う驚愕の事実を発見致しました。
味の安定が最も大事と言うコーヒー屋さんは多い。
でも皆、一度も同じ味に出来た試しがないと言っている。
毎日が勉強。毎日が経験。
答えは見つからないかもしれないけれど、毎日が勉強。
今ひとつわかりにくいのがグルメコーヒーとスペシャルティコーヒーの違いだと思います。
スペシャルティコーヒーやプレミアムコーヒーなど高品質コーヒーの総称が
グルメコーヒーと言う見方が一般的です。
スペシャルティコーヒーについては、生産国各国のスペシャルティコーヒー協会によって基準が
まちまち消費国の協会によってもまちまち、明確な定義や基準に世界共通のものが
ありませんので、ものすごく曖昧です。
つい最近、味の違いを明確にしようと、スペシャルティコーヒーと言う呼び名を
使用してみましたが、何だか、こんなに定義の曖昧な不確かなものを使っていると、
自分の作ったコーヒーがまるで「スペシャル」であるかのような、自信満々であるかのような、
あらぬ誤解を招きかねないと思って、この呼び名を使うのは止める事に致しました。
基準の無いものに、本物なんてあり得ないから、そんな名前を使っても、
全く無意味な気が致しますので。
生産各国のスペシャルティコーヒー協会認定豆とだけの表示に変えました。
日本スペシャルティ協会と言う、生産国ではない、消費国「日本」の協会
が出来たと聞いていますので、 いつか、単なる生豆の呼び名だけでなく、
「液体」としての品質基準が設けられる日が来るかもしれませんし・・。
昔私に、「10人に1人が美味しいと言うコーヒーを作りなさい。
つまり、自分が美味しいと思えればそれで良い。」
と教えてくださった方が今年、亡くなられたと聞きました。
なくなる直前まで、焙煎をしておられたそうです。
この言葉に何度励まされてきた事か・・。
若い頃、相当苦労されたと聞きました。
珈琲豆一粒一粒には、こんな先人の方達の心が込められている。
たくさんの人達の手間がかかり、たくさんの人達の苦労が詰まったコーヒー。
その味にはその人の人生が詰まってる。
色々な味の好みがあって、色々な味のコーヒーがある。
それが一番大切で、一番素敵な事だと私は思う。
出来の悪い子ほどかわいいとよく言いますが、
私にとって珈琲は、まさしくそんな存在です。
干ばつは大丈夫だったか、霜は大丈夫だったか、ハリケーンは・・
変な味に染まらず、ちゃんと甘味を蓄えて、すくすくと良い子に育っているだろうか。
心配でたまらない。
できる事なら、農園まで飛んでいって、影からそーっと覗いていたい。
毎日の焙煎でも、今日は言う事聞いてくれるだろうか。へそを曲げたりしないだろうか。
いつもそんな事ばかり考えてしまって、日常生活に支障をきたし、
前代未聞級の失敗が続く毎日です。
こんな事では、人としてダメな人になってしまいそうなのですが、
この心配事がなくなる日は・・・・一生来ない・・・。
今日、こんなメールを頂きました。
「この小さい豆は何だ。袋の外から触っただけで良い豆でない事はわかる。
お前の店は、くず豆を売っているのか。」
と言う内容のものでした。
もっとお客様に知って頂かなければいけない事がたくさんあるのだと良い勉強になりました。
やるべき事をやらずに過ごして来てしまったのかもしれません。
モカマタリと言う豆があります。 イエメンで採れるモカコーヒーをこう呼びます。
当店が使用していますクラシックマタリは、グルメコーヒーの範疇には入りますが、
100%天日乾燥で精製されますので、品質が気候条件に左右されやすい上、
「見てくれ」は小粒で汚い豆が非常に多く、とてもきれいとは言えません。
臼で挽く脱穀法の為に、潰れた豆が多いのもマタリの特徴です。
その見てくれや、発酵臭を嫌って、扱わないお店も多いようですが、
それも、モカマタリの個性。当店では、モカブレンドにはモカマタリを使用しています。
クラシックマタリ以外に、高品質として知られるアールマッカ・バニーマタルと言う豆があり
ますが、「見てくれ」はクラシックマタリと変わりません。
味は、アールマッカの方がきれいな味がします。クラシックマタリは、より野性的。
バニーマタルはもっと、野性的。
エチオピアで採れるモカコーヒーにモカハラーと言うのがあります。これも非水洗ですので、
一番良いボールドグレインさえも、「見てくれ」は、やはり汚いとしか言い様がありません。
非水洗モカにはゴールドクロップと呼ばれる色のかわった豆があります。
一番貴重で美味しい部分なので、高品質の豆ほどその混入率が高くなります。
結果として、その混入率が高いほど、色むらが生じます。ボールドグレインは色むらが多くあり、
煎りムラだと思う方もおられるようですが、それが良いモカコーヒーの証とも言えます。
エチオピアには、水洗式のモカもあります。高品質な水洗式モカと比べれば、
汚いし雑味も多いけれど、非水洗のモカには、そのモカにしかない
個性があるので、当店では天日乾燥の非水洗モカを使用しています。
こう言う「昔ながらのモカコーヒー」の味も伝えていきたいと思っています。
同じ、天日乾燥の豆で有名なものに、ブラジルコーヒーがありますが、
当店のモンテアレグレは、半水洗式です。
ブラジル スペシャルティコーヒー協会認定の高品質豆である事に違いはありませんが、
「見てくれ」と言う点では、良くはありません。
モンテアレグレは、ブルボン種100%ですので、小粒の方が旨味が濃い為、
当店ではあえて、小粒の14/16メッシュを使用しています。
見てくれは非常に小粒で不揃い。
ブラジルで有名なものにサントスと言う豆があります。
低品質であっても、「見てくれ」は最高にきれいです。
ブラジルに限らずコーヒーは、大粒の方が大味で、小粒の方が旨味が濃い。
ブルーマウンテンやクリスタルマウンテンなど、ふあっとまろやかな透明感のある味
を持ち味としているもの以外は、旨味が濃い方が私は美味しいと思います。
焙煎に関しても、見てくれの良いしわの伸び切ったきれいな表面の豆は
旨味が抜けきっている場合が多く、見てくれの悪いしわくちゃの方が旨味が
ぎゅっと詰まっていたりします。
「見てくれ」よりもっと大切なものがあると、私は思います。
今月のコーヒーのコスタリカは、数で言えば非常に希少な極少品種ですが、
それ以上に味も、現在では貴重と言える稀有な味を持っています。
何だか懐かしくて涙が出そうになりました。
私がまだ、駆け出し(と言っても、今でも充分駆け出しですけど・・)の頃に、コロンビア
アピア
を何とかもっと美味しく煎れないものかと、何トン(!)と言う豆を無駄にして格闘していた頃、
もうこれ以上は・・と言う最後の最後に、出来た!と飛び上がって喜んだ・・
時の味に似ています。今思うと出来ていなかった・・のですが、それでも昔は本当に、
コーヒーがまろやかで甘かった。その頃の懐かしい香りとまろやかさ、甘味。
ハニーコーヒーと言う名前の由来は知らないけれど、その名前の如く、蜂蜜をお湯で溶かした様な
味がしました。
メキシコのサンタカタリーナと言う豆があります。
アピア同様、何とかこのサンタカタリーナを・・と思い続けて早○年。
しかし、その生豆価格の高さから扱うお店がほとんどなく、定番のブレンドに使っているのは、
関西ではうちだけだそうで、他では全く売れなくて・・と、ワタルさんが嘆いていました。
そう言う意味では、百合ブレンドはとても贅沢で貴重なブレンドなのですが、
百合ブレンドよりもっと良いのは無いの?と聞かれると、ちょっと凹んでしまいます。
以前、とあるコーヒー屋さんでコーヒーを買ったら、「高品質のコーヒーに慣れていない方は、
次の事を守って抽出して下さい。」と言うような事が書かれた紙が付いてきました。
きっとこの人は、もっと濃いのはないの?とか、もっとこくのあるのはないの?
とか散々言われて来たんだろうなあ。
コーヒーは嗜好品だと言うけれど、その嗜好を司っているものは「口慣れ」。
その「口慣れ」を作ってきたのも、作っていくのも、私達コーヒー屋さん。
責任重大です。
もうすぐ、ワタルさんにもフェアトレードのグアテマラが入ってくるそうです。
フェアトレードそのものは素晴らしい事だけれども、そのお金で何をするかが今ひとつ
見えてきません。サンプルを見た限り、その価格はとてもフェアとは言えないものです。
ただ生活を助ける為のものであるなら、寄付や募金で良い。頑張って良いものを作った
人にその代償として与えられるものでなくては意味がないように思います。
お金ではなく、良いものを作るためのノウハウであったり、その為に必要な道具であったり、
施設であったり、そういった物を与えて欲しい。もっと良いものを作って欲しい。
もっと良いものを作ってくれたら、お金はいくら積んでも・・とはいかないけれど、
できる限りをさせてもらいたい。それが本当のフェアなのではないかと思います。
美味しくもないコーヒーを普通よりたくさんお金を払って買って、人助けをしたと言う満足感
に浸りながら美味しくもないコーヒーを満足気に飲む・・・・。それで良いのかなあ。
ホームページが少し新しくなって、また、価格や送料の変更もございまして、
皆様にはご不便やご迷惑をおかけ致しております。申し訳ありません。
一部の新聞に、とある珈琲豆から無認可の殺虫剤成分が検出されたと言う報道が
あったようなのですが、当店の豆は全て検査確認済みすので、どうぞ
ご安心下さいませ。
-2003.10-
- お知らせ お客様各位 −
本年度10月1日より、誠に勝手ながら諸事情により、500g以上・1kg以上の割引を廃止させて頂き
ます。(従来は、500gと言えば500gの袋で一つ、1kgと言えば1kgの袋で一つと言う販売が主で
したので、100gを何個か販売するよりも袋代が助かる分お客様に還元致しましょう・・
と言う事で500g以上・1kg以上の割引を行っておりました。でも、最近は小分けを御希望される
方がほとんどですので、袋代を還元・・・出来なくなってきてしまった・・と言うのが主な理由です。)
また、北海道・沖縄の送料を500円から1000円(珈琲豆2500円以上お買い上げの場合は500円)に
その他の地域は、珈琲豆1kg以上お買い上げの場合の送料無料を珈琲豆2500円以上に変更致し
ます。(思った以上に、配送料がばかにならなくなって来てしまった・・と言うのが理由です。)
本当に勝手で申し訳ありませんが、何卒御理解賜ります様お願い申し上げます。
−2003.9−
待ちに待ったグアテマラが入って参りました。その名も「エルインフェルト ウーノ」。
今回数十袋しか日本に入ってこなかったらしく、残念ながら今月のグルメコーヒーには、これとは
違うグアテマラを出しています。それだけの数を確保出来ませんでした。
サンプルローストしてみて、久しぶりに「でゅるんでゅるんに甘い」コーヒーを楽しむことが出来
ました。限りなく透明でフルーティな酸味。芳醇な香り。そして、でゅるんでゅるんの甘味。
そう言えば、ほんの数年前までは、こんなに高価な豆でなくても結構、「でゅるんでゅるんに甘い」
コーヒーに出遭う事が出来ていたなあ・・と懐かしく、又何だか歯がゆい気持ちにもなりました。
「もっと、もっと、こう言う良いコーヒーをたくさん作って下さい。」と農園の人に土下座して頼みたく
なるのですが、地中温暖化など色々な問題で難しいのかもしれません。
皆様にももうすぐお届けできると思います。お楽しみに。
キリマンジャロ のモンデュールをワタル以外の商社が買い付け、それをモンデュールと言う名で
販売する。一見何の問題もなさそうなのだけれど、それが例えばワタルが買い付けを断った格下
の豆だったらどうでしょう。
同じキリマンジャロにもピンからキリまである事すらわからない人が多い中で、
同じ農園の同じブランドの豆にもピンからキリまである事を解する人がいったいどれだけ居るの
だろう。その、品質的にも価格的にも劣る豆が、品質的にも価格的にも高い豆よりも、高価な価格
で販売されていたら、混乱を招くばかりですね。
−2003.8−
先日は勢い余って「おすすめ致します」なんて言う言葉を書いてしまいましたが、
実は私は、おすすめするのもおすすめされるのも大嫌いです。
自分の好みは、自分にしかわからないので、自分で探すしかないのではないかと思うのです。
人がこう言ったとか、人にこう聴いたではなくて、自分が思う美味しさとはどんなものかと言う事を
知ることが大切だと思います。それには、固定概念や思い込みを捨てて、色々試してみる以外に
ありません。最近は、オンデマンドの珈琲屋さんが流行りのようですが、
珈琲はある程度の量を大きい焙煎機で煎ってはじめて、ふくいくとしたふくよかな味、芳醇さが
生まれます。それは、どんなにがんばっても、少量づつを小さな釜で煎っていては、
決して表現の出来ないものです。私は、それこそが、「あじ」があると言う言葉に使われる様な、
珈琲の「あじ」と言うものだと思っています。私は今まで、オンデマンドのコーヒーを数多く口にして
来ましたが、一度もそこに「あじ」を感じた事がありません。私なら、「あじ」のないコーヒーを売る
くらいなら、珈琲屋なんて即刻辞めてしまいます。そんなコーヒーを飲むくらいなら、朝から発泡酒
でも飲んで昼寝していた方が、私にとってはよっぽど幸せです。
でも、そういうコーヒーを美味しいと思う方もいらっしゃいます。
味の好みは100人100色100通り、コーヒーも100通りの味があって良いと思います。
うちの生豆は、ワタルという生豆商社から買っています。全部ワタルさんの生豆です。
浮気をして違う所からも買ったりします。生豆の味を知る為に、他のお店のコーヒーもたくさん
飲みます。でも、やっぱり私にとってはワタルさんのコーヒーが一番美味しいです。
例えどんなに良いと聴かされようとも、例えどんな賞を取っていようとも、スペシャルティコーヒー
協会がなんと言おうとも、自分で飲んで美味しいと思えなければ、くず豆と同じ。
でも、そう言えるのは色々なコーヒーを試しているからこそ。
年間何百キロ・・何トンと言う豆を無駄にして、お金を全部つぎ込んで、選んでいるからこそ。
無駄があるからこそ。「がっかり」があるからこそ。「失敗」があるからこそ。
思い込んでいるだけでは、「本当に」美味しいコーヒーには、一生出逢えません。
よく器具や抽出法で御相談を受けるのですが、
きれいな味さえ出す事ができれば、余計な味に邪魔されずに出したい旨味だけを濃く出せるので、
御家庭でお使いになるものは、器具も抽出法もきれいな味が出せるものをお選びになるのを
私はおすすめ致します。
それ以上のものを求めるとえらい目にあいます。
ミルだって何十万円かけても納得のいくものなんてきっと見つからない・・。
気が変になります。
それは、私たちコーヒー屋の仕事・・。
-2003.6-
うちの焙煎機は相当古いので、ちゃんとメンテナンスしていても、時々、してはいけない音がします。
今日は、鈴虫の鳴き声のような変な音・・。
「風流やねえ。」と相方。
大きなのっぽの古焙煎機・・。私の命より大切なもの。
7月に新しいグアテマラが入荷予定です。
ワタルさん曰く、「すんばらしい!」そうです。
農園主さんが「スターバックスは嫌いだ!」と、スターバックスには売らなかったそう・・。
楽しみです。早く来ないかなあ。
折角の三日連休でしたが、風邪をひいて寝込んでしまっておりました。
やっぱり私は、「止まると死ぬねん。」の人だった・・・と実感。
--2003.5--
今日から、色々考えた末、ディッティングミルを店頭で使用する事に致しました。
カリタのミルと新旧交代の儀。
カリタは口当たりの味に旨味が来る為、まろやかだけど、甘残がなかなか出てこない。
ディッティングは、後口に残る甘味が濃い。酸味も濃い。
高品質珈琲の味を上手に伝えてくれます。
じっと我慢して、裏方で使ってきて良かった。
と、言うわけで今日からディッティング。
後は、私の「気」と「魂」を込めるだけ。
今日は珈琲の価格について。
以前にも書きましたが、うちの価格はちょっと安すぎますか?
「安いけど大丈夫か?」なんて言うご質問を受けると、
相方と二人でお腹抱えて笑ってしまいます。
あのー、そんなに無理して買わなくてもよいかと・・。
スターバックスは、アメリカ本国では200円代〜300円前後。
日本のスターバックスの価格が100g400円前後になるのは、アメリカから
焙煎豆を輸入する形態が取られている為、膨大な流通コストと焙煎豆にのみかかる関税が
上乗せされるからです。
わざわざ古い豆を関税払って飲まなくても・・。
でも、日本には「悪い豆だけが安い」珈琲の歴史がありますので、どうしても良い豆は高くで売ら
ないとわかってもらえないと言う、もどかしさがあります。
世界でも有数の珈琲輸入国である日本の「より悪い豆をより安く」と言う体質が、
生産各国の生産性重視の栽培につながる危機感を持たずにはいられません。
私は、日本でもいつか高品質の珈琲が生活必需品として親しまれる日が来ると信じていますし、
そうしていくのは、私達コーヒー屋さんの使命のような気がしています。
コーヒーの味の違いでわかりやすいのはお米の味の違いではないでしょうか。
コーヒーもお米と同じ農産物です。お米は品種や産地によって随分味が違います。
日本のような小さな国でさえそうなのですから、国によって味が違い、
同じ国の中でも産地によって味が違うのは、自然な事です。
コロンビアの北部と南部で味の傾向が違ってきます。ブラジルの同じ地区のコーヒーには同じ味の
傾向がみられます。同じ品種の豆を使っても、国によって、産地によって、味は違ってきます。
ブルーマウンテンが高価なのは、産地が狭い範囲で限られており、希少価値が高いと言うだけの
事です。その点、魚沼産コシヒカリと似ています。偽物が出回るあたりもよく似ています。
何が良い悪いと言うより、自分の嗜好に合うコーヒーを選ぶ事が大切です。
大切なのは、良い悪いではなく、自分の好きな味。
最近、「ジャマイカ」が商売っ気を出して、色んなブルーマウンテングッズをくれたり、
認定証か感謝状かなんだかよくわからないものを作ってくれたりしています。
ひとこと言いたい。
そんな暇があるなら、コーヒーもっと美味しくして下さい。
一年前に買ったディッティングミルの刃がようやくこなれてきて、微粉の量も少なくなり、
見た目の挽き目が非常にきれいになってきました。
味も、インパクトのある甘味を出すことが出来ます。
でも、何でしょう。今まで、何十年も使ってきたカリタのミルで挽いた方が、まろやかでやさしい味
がします。相方曰く、「ディッティングは飽きる味。カリタは又飲みたくなる味。」
ミル一つをとっても、こんなにも味が違ってくる。
ディッティングも長く使うにつれ、やさしい味が出せるようになるのでしょうか。
人の「気」や「魂」が機械に乗り移るのかもしれません・・ね。
コーヒーが嫌いな方って結構多いですね。
日本には本当に不味いコーヒーしかなかったからなのかもしれません。
酸化して酸っぱかったり、油臭かったり、低品質のくさいコーヒーだったり、
くず豆香料付きのインスタントだったり・・
コーヒーが嫌いな人ほど味のわかる人が多いのではないかと思ったりします。
折角スターバックスが来て高品質コーヒーに口慣れる人が増えるかと思っていたのですが、
何だかちょっと違う方向に行ってしまっているみたいです。
スターバックスおすすめのコーヒープレスやゴールドフィルターを使う方が増えたようで・・。
酸化したコーヒーの胸焼けする油臭さを取るには、コーヒープレスがちょうど良い役目をしてくれて
いると言うだけで、直火の、しかも煎りたてのコーヒーをコーヒープレスで淹れるほどもったいない
ことはありません。
基本的に、欧米で作られたコーヒー器具は、熱風で煎られたコーヒーを前提に作られています。
熱風のコーヒーは苦味も出にくいですが、旨味も出にくいので、何とか旨味を出そうと言う抽出法。
逆に直火は、旨味も濃いけれど、苦味も強い。
カリタは日本のメーカーですので、どちらかと言うと日本の低品質豆を美味しく淹れる為の工夫が
されています。(熱風で煎った高品質コーヒーをカリタで淹れたり、粗挽きにすると、すかすかの味
になります。)メリタはどちらかと言うと高品質豆をより美味しくと言う淹れ方です。
それぞれに合った淹れ方をしてはじめて、どちらが美味しいかと言うことが言えるのではないで
しょうか。どれもこれも同じ淹れ方で比較して、どうか、とは絶対に言えません。
人によってすすめる淹れ方が違うのは、煎り方が違い、使っている豆が違うからに他なりません。
だからと言って、人にすすめられた抽出をそっくりそのままやっていても美味しいコーヒーには
出逢えないかもしれません。美味しいコーヒーに出逢う近道は、自分の好きな味が出せる
抽出法を見つけること。
--2003.4--
今日は生豆の品質による味の違いについて。
生豆の品質は、品種・栽培法・栽培地とその気候・精製法で決まります。
最近では、その上に輸送法や保管法にまでこだわった生豆が登場してきました。
品種はアラビカ原種(ティピカ・ブルボンなど)が高品質種としてあげられます。
同じ品種を使っていても、採れる場所によって味は変わってきます。
珈琲に最適の栽培地は、火山灰土壌で水が豊富にある山岳地帯の高地があげられます。
昼夜の寒暖さや気候条件も味に影響を与えます。
栽培法には、在来農法(昔ながらの農法)が良いとされています。
天日乾燥・布取り、完熟手摘み・樹上乾燥など。
機械乾燥にすれば、天日乾燥で4〜50日かかる工程が1週間ほどで済みます。
酸味に濁りがでるなど、味に少なからず影響を与えます。
機械摘みは、完全に熟しきらない豆までも一斉に摘み取ってしまうので、バラツキのある
珈琲に仕上がります。完熟豆のみを手摘みする事でしか本当に良いものには仕上がりません。
精製とは、珈琲についている外皮・果肉・種皮をきれいに取り除く為に行われるものです。
水洗い(ウォッシュド)と乾燥式(ナチュラル)と、セミウォッシュド(半水洗い)があります。
最近はナチュラルを良しとしない風潮にありますが、多くは自然乾燥で行いますので、
自然環境の変化が出来栄えに大きく影響を与えてしまうからです。
精製の技術は年々向上してきているようです。
そうして作られたコーヒー生豆は、お米の新米と同じで、新しいほどフレッシュできれいな味わい
を持っています。輸送や保管には、リーファーコンテナ(20度以下)、低温倉庫(湿度も管理)が
良いとされています。そうする事で新豆のフレッシュさをより長く保つことが出来ます。
味は、雑味(濁り)が無いきれいなものほど良いとされています。甘酸っぱい香りがあり、
酸味に個性をもつもの。味に幅があるものほど良いとされます。
逆に、にごり・渋み・雑味・すっぱ味・臭さを持つものほど良くないものと評価されます。
では、良いコーヒーほど美味しいかと言うと、そこにはやはり、嗜好と言うものが大きく関わって
きますので、一概には言えません。日本人好みの味と現地の人がすすめる味にかなりの開き
がある事も多いようです。イタリアのエスプレッソを例にとれば、本場の有名なエスプレッソ
バールは、ほとんどがロブスタ種を使っています。グルメコーヒーに口慣れた人にとっては、
「不味いもの」になってしまいますが、イタリアの人にしてみれば、「灰汁をきれいに取り除いた
料理を食べている日本人にはコーヒーの本当の旨味はわかるまい。」となるでしょう。
私自身は、最高品質の豆も好きですが、個性的な豆はもっと好きです。
完璧なものより、際立った個性のあるものが好きです。
一つでも良いところがあるものは、その良いところだけを引き出してあげれば良い。
際立った個性のあるものはその個性を生かしてあげれば良い。
それが、「焙煎」と「ブレンド」と言う、珈琲屋さんの大切な「仕事」ではないかと思うのです。
現在主に使われている焙煎機による味の違いについて。
焙煎機によって味の傾向と言うのがあります。
もちろんお店それぞれで工夫を凝らして、改良して使ってらっしゃる所がほとんどですが、
それでもやはり焙煎機による味の傾向と言うのがあります。
半熱風式・・半熱風を使っておられるコーヒー屋さんが一番多いのではないでしょうか。
焙煎機の構造はほとんど同じで、釜の部分(内のドラムの部分)に、パンチングの穴があいて
いて豆に直接火が当たるのが直火式、穴があいていなくて豆に直接火が当たらないのが
半熱風式です。炭火、直火等の表示のないお店はほとんどが、半熱風式と思って良いと
思います。甘味が少しねっとりしがちです。相対的に、少し抜け気味の味です。
この珈琲を表現するのによく「可も無く不可もなく」と言う言葉が使われます。
熱風式:大量生産の珈琲はほとんどこれですが、自家焙煎のお店で使われる熱風式とは
別物と考えた方が良いと思います。味の為ではなく大量生産の為に熱風式が使われます。
出来栄えは機械の性能に制約され、人の手が加わることはありません。
味は、私がご説明するまでも無いかと思います。珈琲の持つ味全部を飛ばして煎られる事が
多いです。
炭火:焦げた苦味が強く出る傾向にあります。焙煎法にもよりますが、少し旨味は抜け気味
です。カロリーオーバーなのではないかと思います。焼き鳥などの炭火焼とは違って珈琲は、
焼くと言う感覚でとらえるとどうしても、火を入れすぎてしまうのではないでしょうか。
受注焙煎のジェットロースター:5分で煎ってしまいます。
珈琲の旨味は何処へ行ってしまったのでしょう・・。
本当に大きなお世話なのですが、丹精こめて生豆を作ってくれた農園の方に失礼ではないかと
・・。家庭用焙煎機も同じ系統の味がします。
小型焙煎機:焙煎機は小型であればあるほど炒りムラが出ます。その上、
ガス圧計もダンパーもついていないので、大きい焙煎機より焙煎はかえって難しいです。
それらの構造や形状、火の入れ方によって味は様々です。
美味しさを追求する為のものではなく、焙煎そのものを楽しむ為のものと割り切って使えば、
充分楽しめます。自分勝手流珈琲の出来上がりです。びっくりするくらい煙が出るので、
くれぐれもご近所迷惑にならないように・・。これを「マンションのベランダに置いて煎っている」
なんて言う人の話を聞くと、とてもほほえましくて、なんだか嬉しくなってきます。
(あっでも、うちでは生豆は売りませんけど・・。)
うちにもサンプルロースト用に1台置いてあります。名前は「煎っ太郎」。冗談みたいな名前
です。紅茶の缶のふたでダンパーを作ったりして、楽しんでおります。
熱風式:自家焙煎のお店で使う熱風式・・
原型は焙煎機界のベンツと呼ばれる「プロバット」で、釜に直接火が当たらずに2重構造に
なっています。プロバットは本当にベンツが買える程高価ですが、普通の焙煎機を改造
して2重構造にしてしまう事も可能のようです。この焙煎機は、中深煎りが得意です。
焙煎法にもよりますが、高品質豆特有の
「きれいな酸味の後に感じる甘味」を上手に表現できます。
他の焙煎機だとこの領域は焦げた苦味が強くでますが、これは焦げ味も出にくいです。
(基本的には中深煎りなのでやっぱり苦いですけど・・。)
高品質豆はこう煎るべきと言うお手本の様な、教科書通りの味ができます。
ただ、その為だけに、直火をこの焙煎機に変えてしまうと、失うものも大きい・・。
ぷるんとした芳醇な甘味・苦味だけではない珈琲の旨味・その豆の持つマックスの個性
・美味しい浅煎り・そういった大切なもの。ただ、こういう味もつくってみたい。
出来れば直火で・・とは思います。
最後に直火:これほど煎る人(煎り方)によって味が大きく変わってしまう焙煎機はないので
はないでしょうか。これが同じ焙煎機で煎られたものか・・とびっくりしてしまう程の違いが
出ます。味は旨味が抜けてしまったものから全部の味が残ったもの、旨味が非常に濃いもの
まで様々です。直火ほど、個性豊かに珈琲の味を表現できるものはないのではないかと
思っています。また直火ほど、可能性を秘めた、つまり、手のかけ様によってどうにでもなる
焙煎機はないと思っています。
焙煎機に制約されない自分の味がどこまでも追及できる焙煎機。珈琲は珈琲屋にとっての
作品でなくてはなりません。個性のないものより、その人の人となりが表れるもの。
そういうものこそ「魅力的」。私にとって、これほど魅力的で創作意欲(征服欲?)を
駆り立ててくれるものは他にはありません。
焙煎に、これで良いと言うものは何一つありません。世界一良い珈琲なんてどこにもありません。
「焙煎機に制約されない、世界でたった一つの味。」そんな珈琲に私は強く惹かれます。
炭火もありつつ、直火もありつつ、熱風もありつつ、半熱風もありつつ、石焼きもありつつ、
色々な人がいて、色々な味があってこそのコーヒー、それで良いと思います。
今月のグルメコーヒー。フクダトミオ マラゴジーぺについて。
このマラゴジーぺは、多くの大粒豆が持つまろやかさを備えながら、多くの大粒豆の欠点である
「大味」を見事に一蹴したとても良い豆だと思います。
いつもハンドピックする時、その愛嬌のある豆面を見て「漫画や!漫画!」(曰相方)と、大笑い。
とても愉快な気持ちにさせてくれる素敵な豆です。
今年は2000袋収穫を目指して、フクダトミオ氏もがんばっておられるそうです。
来年も又会えると良いな・・。
関西でも、やっと最近、コーヒーの酸味を好む方が増えてきたそうです。
私も実は相当な酸好きであったと改めて思い起こす今日この頃です。
酸化したコーヒーの酸味や焙煎の失敗によって出る酸味と、本来の旨味である酸味が混同され
酸味嫌いの人が増えたようですね。すっぱ味と酸味は、違います。
今まで一番甘いと感じたコーヒーは、同時に、酸味が強く出た渋いコーヒーでもありました。
甘味は酸味と共にあるもの。その「きわきわ」が一番旨い。そこにコーヒーの本当の旨さがある。
だからこそ毎日その「きわきわ」を探る。
毎日毎日探る。毎日毎日究極の酸味を求めて。脳みそがもーコーヒー色になるまで・・・
もー探りすぎ。
3月より、メニューに、キリマンジャロのミディアムローストを新しく追加致しました。
私はあまり、お客様の事を日記に書く事は致しません。
お客様を商売道具に使っているみたいで、どうも書けません。
本当は、こんなお客様がこんなことを教えてくださったとか、こんな有難い事がありました、
とか、涙が出るほど感動したとか、一杯一杯書きたいことがあるのですが、どうも、書けません。
でも、「感謝の気持ちで一杯」だという事はお伝えしなければ・・。
本当に、ありがとうございます。心よりお礼申し上げます。
--2003.3--
